シニア・コミュニティ 2015年3・4月号・94号

【特集】看取りを考える

[特集]≪巻頭インタビュー≫
医療は誰のためにあるのか、もう一度考えたい。その先に真の看取りがあり、「平穏死」が待つ

世田谷区立特別養護老人ホーム「芦花ホーム」 医師 石飛幸三 氏 「看取り」とは何だろうか。もやもやとした思いを胸に「芦花ホーム」を訪ねた。冬晴れの中にモダンなホームがあった。白を基調とした建物は多くの緑に囲まれ、静かでのどかな雰囲気がいかにも世田谷らしい。ここを“ 終の棲み家”として100 名の高齢者が暮らす。平均年齢は約87歳、9割の人が認知症の症状を持っている。
医師の石飛幸三氏は半世紀にわたった医療の現場を離れ、このホームの常勤医となる。10 年前のことだ。そこには“ 治す”ことを使命とされる医療とは、大きく違う現場が待っていた。それまで自分自身がいた医療との軋轢に翻弄される毎日があった。そして、最後は病院に送られて迎える多くの死。これでいいのだろうか。大きな疑問がわく。
そして生まれたのが「平穏死」という考え方であった。石飛氏は言う。「本当にここに来てよかった。人生の最後の様子を知ることが出来た」と。また、病院勤務のままで終わっていたら、今でも死ぬのが怖かったに違いない、とも。看取りとは少なくとも単なる“ 行為” ではないのだろう。看取りは自らの生き方を見つめることでもあるのか。平穏な死についての熱い語りかけに、深く考えさせられる時間であった。

[特集]看取りの向うに“ 家族” の姿が見える ―小規模多機能から見た「看取り」―

日常の中に“幸せ”を味わう  川崎市幸区にある小規模多機能「ひつじ雲」に、NPO法人「楽」の柴田範子理事長を訪ねる。そこで見えてきたのは「看取りは“特別”なことではない」ということであった。家族には“看取り”という特別な言葉はない。こんな家族のエピソードを教えてくれる。その人は医師から余命半年と言われていた。痰の絡みも強く、認知症の症状を持つ。しかし、娘さんは生活に工夫をしながら介護をしていたせいか“大変”だとは思っていなかったようだが.....

[特集]「看取り」の体験を重ねた介護職は自分なりの死生観を持つことになる

施設での看取りの状況  ― 多くは家族の希望で決められる施設での看取り  本人自らが施設での看取りを希望した人は9 名(13.2%)にすぎなかったが、それは意思を表明する機会がなかったり、認知症などのためで、多くは家族の意思で決められた。医師・看護師等から説明を受け、自然な経過の中で施設の中での看取りを希望する家族が多かったようだ。
 職員の看取りに関する考えはどうであろうか

[新医療通信]新オレンジプランは認知症対策の切り札になるか?

国際医療福祉大学大学院教授の大熊由紀子氏に新オレンジプランの評価を聞く 従来の政策の反省から始まり評価された旧オレンジプラン ―
 世界的な課題となっている認知症対策に各国が協力して取り組むため、2013年12月にロンドンで「G8認知症サミット」が開催された。その後継イベントとして、昨年11月に東京で開かれた「認知症サミット日本後継イベント」。国際会議に出席した安倍晋三総理は、新しい認知症国家戦略を策定する意向を表明した。その指示を受け、厚生労働省は.....

[経営課題]現場発 施設長の声 他人に勝つ必要のない介護

特別養護老人ホーム緑風園 総合施設長 菊地雅洋 介護サービスにベストなケアは存在せず勝ち負けをつける必要はない ―
 特養に自ら望んで入所する人はいないと言われる。ほとんどの場合、何らかの事情で家族が特養入所の申し込みを行い、利用者本人は自分の意思とは違っても、家族の判断に従ってしぶしぶ入所するのだと言われている。たしかに本人が積極的に特養入所を望むケースは極めて少ないと言ってよいだろう。そして「家族が申し込みをする」という状況が大多数であることも事実だろう。ただしこの状況は、「家族が身内を特養に入所させたいと希望している」という意味合いではないのかもしれない。家族も特養に身内を入所させることを望んではいないが、自宅での介護に限界を感じ、やむを得ず特養への入所申請に至るという事例が多いということを念頭に置くべきである。つまり家族にとっても、特養入所は、「よりまし」な選択にしか過ぎないかもしれないのだ。

[経営課題]シリーズ・介護の扉 旅立った母が教えてくれたこと

介護の取材を生業とする娘にその身をもって介護の意味と意義、そして実態を知らせた人がいる。 拘束は医療現場の常識 ―
 2月2日に母が旅立った。レビー小体型認知症と診断されてからおよそ4年。要介護5の限度額では追いつかないケアが必要になって2年が経つところだった。どんなことがあっても在宅で看取る。その思いが揺らいだことはないが、先の見えない不安と疲れから、寝ている母の顔を布で覆ってしまいたい衝動に襲われたこともある。
 1 年前、初めての排便ケア。訪問看護師から一度だけ教わった浣腸を真夜中に1 人で行うことになり、プレッシャーで汗をかいた。ベッドのシーツを汚すことも多かった。緊急で訪問看護師を呼び、その手際に驚嘆したことも少なくない。

[経営課題]弁護士直伝! 介護トラブル解決塾Vol.20おかげさまです、外岡です!

介護・福祉系法律事務所「おかげさま」代表 外岡潤  弁護士の外岡です。本連載も遂に20 回を数えました。いずれバックナンバーをまとめた書籍化も近い?かもしれません。今回はお馴染みの、転倒事故後のご家族対応がテーマですが、最近事業者側から珍しい相談がありましたので、これを基にした事例をご紹介します。

[経営課題]シリーズ・発掘 介護チャレンジャーを探せ!!Vol.20

入居者と家族をつなぐ施設の看取り 特養のイメージを覆したのは…
 特別養護老人ホーム「ラヴィータウーノ」(大阪府此花区・社会福祉法人ラヴィータ)に注目したのは、施設イメージを大きく覆してくれたことがあったからだ。また、介護保険制度に「看取り介護加算」が導入された2006 年以前から、いや正確に言えば利用者と家族のニーズに呼応するように看取りの実践を重ねてきことにも関心があった。
 ラヴィータウーノは、2004 年の4 月に開所した。特養80 床、ショートステイ8 床の従来型施設である。デイサービスなどは併設していない。従来型であるから全室個室・ユニットケアではない。

[経営課題]シリーズ・施設探訪 かがやきの季(とき)中野南台(東京都中野区)

マンション開発大手の大京がグループ初のサ高住をオープン 分譲マンションの大量供給からストック事業のサ高住事業へ ―
 マンション開発大手の大京は、1964年の設立から50年間で約34万戸の分譲マンションを供給してきた。グループ全体では、45万戸以上の供給実績があり、受託管理するマンションは52万戸を超える。同社が第1号物件の「ライオンズマンション赤坂」を開発・販売したのは1968年。当時の購入者の中心年齢は概ね35歳らしく、今では80歳を超える年齢になる。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)事業に参入した背景には、初期に分譲したマンションの入居者が高齢化しているという事情があるようだ。

≪特別連載 第3回≫ 「プラネット」が生まれたのは時代の要請!

「ふくせん」の理事長の岩元文雄氏に聞く、プラネット創設の意義と役割 ――――「ふくせん」の理事長の立場で、プラネットの運営委員に参加されているのはなぜでしょうか
 福祉用具の供給は、介護保険制度の以前から行われていたように比較的歴史があり、長い間、地域で高齢者の自立した生活を支える役割を担ってきました。 平成12 年度の介護保険制度導入によって基盤整備の必要から全国的にサービスの「量」が求められ、市場が急激に拡大しました。当時は、他の高齢者サービスと同様に、福祉用具サービスも「質」よりもむしろ「量」が問われました。それがこの業界の創成期の特徴です。
 そして.....

[連載]シリーズ・介護施設のための健康講座 今年流行のインフルエンザはA 香港型が主流

第2回 高齢者施設でインフルエンザ集団感染により死亡者多発 多発するインフルエンザの集団感染 ― 
 前回、肺炎球菌による肺炎問題を集中的にレポートしたが、あれからまだ2か月足らずにも関わらず、今度はインフルエンザ感染による高齢者の肺炎問題が多発、社会問題化してきている。今回の介護施設等における“肺炎死多発”の背景を追跡取材して理解できたことは、
1、高齢者の免疫の低下でインフルエンザが重症化しやすくなった。
2、A 香港型インフルエンザの遺伝子が大幅に変異、数十年に一度の流行期に入った可能性がある。
3、大幅な遺伝子の改変は、治療薬、ワクチンの開発を遅らせ、今後も感染者、死亡者の増加が見込まれている。
4、一方.....


その他コンテンツ

[コラム]仙台から「地域」を考える 看取りから学んだ、その人の変わらない日常と「生活」のある風景の大切さ
[コラム]連載第33回 聖隷福祉事業団に学べ
[コラム]《老人たちの居場所》我が道を行き過ぎると救急車に何度も乗るという話
[World News]オランダの新しい介護事情を探る 第14回
[World News]イギリスのホームドクター、認知症ケア、ホスピスの実情を探る 第7回
税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判60ページ
発行日 2015年3月15日

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