シニア・コミュニティ 2015年5・6月号・95号

【特集】家族と介護を考える

[特集]≪巻頭インタビュー≫
認知症のことを語らなくても もっと大きく、深いメッセージを届けることが出来る

いせフィルム・ドキュメンタリー映像作家 伊勢真一 氏 映画『妻の病』に出会った。副題は「レビー小体型認知症」。しかし、そこに認知症の説明は、一切ない。一人の医師と、認知症の日々を生きる妻との10年間に及ぶ記録である。自らも心の病を抱えながら、さまざまな葛藤を経てたどり着いた「愛し直す」の言葉。もしかしたら、これは“ラブストーリー” なのではないか。伊勢真一監督は「問題」を見ないで「人間」を見るという。人間をじっくりと見れば、問題の在りかが見えてくる。そこにあるのは「どうしたらいいんだろう」と戸惑うばかりの家族の姿。伊勢監督は答えを急がない。観たものに“ 考える”ことを求めている。観客の多くは「自分のこと」と受け止めて家路につく。共に生きるとは、そして家族とは。伊勢監督がじっと見つめる先にあるものは。

[特集]社会に取り残される家族ケアラー いま求められる理解と支援

NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジン 理事長 牧野史子 氏 ケアラーは精神的な部分で子育てをするお母さんに似ています―――
 私の専門は教育分野だったのですが、関西に住んでいるときにたまたま遭遇した阪神淡路大震災以来、神戸で地域活動に取り組んでいました。そんな中、仮設住宅に住む高齢者の支援を通して目覚めたのが「家族支援」です。
 当時、いわゆる移動サービスというシステムを導入して活動していました。会員制ですからサービスを使う場合は登録をしなければなりません。そこで訪れたお宅で出会ったのが、非常に疲弊し、孤立する介護者(以下、ケアラー)の姿でした。

[特集]業務の効率化と高度な情報連携で実現した「在宅医療と看取り」の充実

[新医療通信]医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック(東京都世田谷区) 訪問診療に取り組む在宅医療部 年間約100 人の看取り―――
 2005 年に開院した桜新町アーバンクリニックは、2009 年に院長になった遠矢純一郎医師が在宅医療部を開設し、24 時間オンコール体制の訪問診療を開始した。ICT の導入により業務の効率化と高度な情報共有を実現し、これを活用した多職種連携による確かなチームケアが、地域の在宅医療と看取りに一層の充実をもたらした。現在、訪問診療を提供している在宅患者数は、居宅で約280 人、施設で約70 人。年間に約100 人の看取りを行っているという。また、2012年度から認知症初期集中支援チームのモデル事業も実施し、2013 年度には49 人に対して初期介入を行った。まさに地域の在宅医療拠点となっている。

[経営課題]現場発 施設長の声
PDCA サイクルにおける住民啓発活動には「終活」の視点を取り入れたい

特別養護老人ホーム緑風園 総合施設長 菊地雅洋 社会福祉法人に求められる地域貢献どのような活動を行っていくか―――
 新年度から、特養の「看取り介護加算」については、PDCA サイクルの構築による看取り介護の実施が算定要件となっている。PDCA サイクルとは、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の頭文字をとって表したサイクルで、具体的内容については報酬告示と解釈通知(老企第40 号)に示されている。
 前年度までの看取り介護加算の算定要件に加えて設けられた内容としては、計画(Plan)部分では、看取り介護指針に終末期にたどる経過(時期、プロセスごと)とそれに応じた介護の考え方を盛り込む必要があるとされ、さらに施設等において看取りに際して行いうる医療行為の選択肢を示すとともに、医師及び医療機関との連絡体制の整備(夜間及び緊急時の対応を含む)が求められた。しかし従前から・・・

[経営課題]シリーズ・介護の扉 地域包括ケアシステムの“ 真ん中” にあるのは何だ?

仕事か介護か――サービス利用が離職のきっかけを作ることもある 「在宅の限界点を上げる」。国はこの目標に向けてあの手この手を尽くしている。“限界点”とはなんだろうが。これまでの経緯をみると「高齢者が住み慣れた地域で自宅もしくはそれに近い環境で暮らす」ことを指すらしい。だから、地域包括ケアシステムの構築が急務であることはある程度、理解できる。しかし、構築が可能か否かについて考えると、理解不能になる。
 システムづくりに全力で挑んでいる自治体を何か所も取材した。国から投げられたカタチの見えないボールをその手で受け止め、自分たちの力で目に見えるものにしようと邁進する行政マンに心から敬意を抱く。その一方で、言葉が空回りしているとしか思えない居住地の自治体広報紙に溜め息が出る。それだけに、・・・

[経営課題]弁護士直伝! 介護トラブル解決塾Vol.21おかげさまです、外岡です!

介護・福祉系法律事務所「おかげさま」代表 外岡潤 法人の指示に従わないケアマネは「背任罪」?―――
 管理者です。最近うちに入って来たケアマネのA 氏がどうにも言うことを聞いてくれず難儀しています。通常であれば自社のサービスをプランに組み込んでくれるのですが、何故かA 氏はこれを敬遠し、ご利用者宅から離れた他所の法人のサービスを敢えて選んでいるのです。うちのデイ等より優れているといった理由があればまだ納得がいくのですが、・・・

[経営課題]シリーズ・発掘 介護チャレンジャーを探せ!!vol.21

ボランティアを貫いた「えんがわ」のこだわり 「えんがわ」の最終章と新たなスタート―――
「えんがわ」(愛知県名古屋市瑞穂区)は1997 年に活動を始め、これまでNPO 法人格を持たずボランティアによる任意の活動を貫いてきたグループだ。活動内容は多彩で、自主デイや手仕事サロン、空き店舗を利用した事業などを行ってきた。グループを主宰するのは吉川冨士子さん。
 「1 年後にデイを閉める」という連絡を受けたのは2014 年の3 月だった。その理由が知りたくて「えんがわ」に向かったのはその年の暮れだ。思えば、最初に取材に訪れたのは介護保険制度がスタートして間もない2002 年だった。介護保険制度に乗らないで自主事業を貫く理由が知りたかったからだ。

[経営課題]シリーズ・施設探訪 グレイプスガーデン西新井大師(東京都足立区)

日比谷花壇が取り組む「花を身近に感じる住まい」 木や花に囲まれて生活するサービス付き高齢者向け住宅―――
 「グレイプスガーデン西新井大師」は、毎年正月に初詣の参拝客で賑わう西新井大師の近く、閑静な住宅街にある。事業主の日比谷花壇が、東京建物不動産販売に管理運営を委託し、やさしい手が見守りや緊急時対応などの入居者サービスを提供。1階に居宅介護支援事業所と訪問介護事業所を併設し、やさしい手が24時間対応型訪問介護サービスを実施している。
 日比谷花壇ならではの取り組みとして、敷地内の1階庭園と6階屋上庭園に、年間を通じて100 種類以上の木や花を植栽。自然に慣れ親しんできた高齢者が、四季の移ろいを身近に感じられる環境を演出する。特徴的なのは、こうした木や花が単なる鑑賞目的だけではないということ。それは同社が取り組むフラワーアクティビティプログラムや園芸療法と密接に結びついている。

≪特別連載 第4回≫ 東畠弘子・国際医療福祉大学准教授が第1回研究大会に期待すること

東畠弘子・国際医療福祉大学准教授が第1回研究大会に期待すること  7 月に行われるプラネットの第1回研究大会には、「研究」という名前が付いておりますが、それはなぜでしょうか―――
 もともと「プラネット」の正式名称は福祉用具プランナー研究ネットワークというもので、研究という文字が入っています。これはメンバーの中でも、交流を通じて相互に学び合うということが必要なのではないかと、そのような意見が出て、みんなの合意で「研究」と名付けました。そのような思いからすると研究大会というのは不思議ではなく、発足時から会則にも掲載されています。福祉用具の現場で実践している方達が、実践を報告するという場がほとんどないという思いが私にはあります。従って研究と言ってもアカデミックに限るのではなく、むしろ実践的な話、事例報告が寄せられることを期待しています。しかし、・・・

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税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判60ページ
発行日 2015年5月15日

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