シニア・コミュニティ 2016年5・6月号・101号

【特集】介護人材不足を考える

≪巻頭インタビュー≫ 急増する介護福祉士候補者の受け入れ 国家試験の合格率アップが追い風に

公益社団法人国際厚生事業団 専務理事 角田隆氏 ―――EPA における介護福祉士候補者受け入れの背景についてお聞かせください。
 EPA(経済連携協定)は日本と相手国の2国間の協定ですから、それぞれの国によって背景や事情があります。日本側からすれば将来の人材不足に懸念があったということです。特に看護および介護に関して「人材が足りないから外国人に頼らなければならない」と思う人が少なからずいました。一方、GNP の10%を海外派遣労働者が担っているフィリピンには、アメリカやカナダといった英語圏の国に加えて、アラブ諸国にも多くの看護師を送り込んでいるという背景があり、「日本にも…」という希望も大変強かった。

≪インタビュー≫ 究極のサービス業だからこそ 総合的なマネジメント力が問われる介護事業

一般社団法人有料老人ホーム入居支援センター 代表理事 上岡榮信氏  2025年に向けて30万人を超える介護職員の不足が生じるだろうと試算されている。確かに介護現場を支えるケアスタッフの“数”が必要であることを否定するものではないが、本当に必要とされているのは介護事業の中枢を担う「人材」であり「人財」ではないだろうか。介護という枠の中で高齢者にだけ向き合っていれば済む時代は終わろうとしている。医療との連携、地域における役割の増大など、取り組むべき課題が複雑化し高度化する中で、総合的なマネジメント力が問われる介護事業に求められ人材とは。日本国内に限らず海外の施設を知り尽くし「介護事業は究極のサービス業であり、人徳・人財事業」と言い切る一般社団法人有料老人ホーム入居支援センター代表理事の上岡榮信氏に聞く。

≪新医療通信≫ 福祉用具を使って腰痛を予防する「セーフティケア」の介助技術

森ノ宮医療大学 上田喜敏教授 介護・看護職の多くを悩ませる腰痛。森ノ宮医療大学の上田喜敏教授は、福祉用具を使って腰痛を起こさない介助技術「セーフティケア」の普及に取り組んでいる。リフト、スライディングボード、スライディングシートを効果的に活用する介助技術は、介護・看護職、利用者・患者の両方の安全性と快適性を高める。介護職員の離職防止にもつながるかもしれない。

[経営課題] 介護福祉道場あかい花発 masaの声 介護ロボットとITは人材不足を補う手立てになるか

菊地雅洋 北海道介護福祉道場あかい花 代表  経済産業省が3月24日付で発出した「将来の介護需要に即した介護サービスに対する研究会 報告書」によると、IT 活用や介護ロボット等の導入によって、人材難への対策が可能であることが示されている。足りないといわれる介護人材については、需要を抑制することで、必要数を確保できるとして、以下の対策が示されている。
・施設サービスに、見守りセンサー・ケア記録等の電子化・排泄支援機器を導入した際の効果を試算すると、2035年時点で35万人の介護人材需要が抑制される見込み。
・居宅サービスに、ケア記録などの電子化をはじめとした機器を導入した際の効果と、介護(予防)サービス受給者の集住による効果を足し合わせると、2035年時点で16 万人の介護人材需要が抑制される見込み。
 つまり、2035年時点で68万人不足するといわれていた介護人材が、IT 機器活用や介護ロボット導入で、その不足数が・・・・・

[経営課題] シリーズ・介護の扉 笑顔とイメージする力で"悲しむ人"を減らせるか

疥癬で個室に隔離。放置が続く  多くの介護施設職員は激務をこなし、奮闘している。取材で出会った若いスタッフには驚嘆するほどの情熱とモチベーションを持つ人も多い。職員のスキル向上研修に時間とお金を割く施設もある。多くの工夫を凝らすパワーに圧倒されることも少なくない。それでも、身の回りや自身の経験「自分が身を委ねてもいい」と思う特養や老健に出会えていない。
 先日、同居していた母親が特養に入所した知人からラインが来た。彼女は入居以来、毎日ホームを訪ねている。「疥癬になって、感染防止のため隔離部屋送りになった」という。「可哀想だけど、仕方がないね」と返信した。やりとりを重ね、彼女が戸惑う本当の理由がわかった。個室に移った母親は常に入り口を背にして車いすに乗っているのだという。「母は自分では車いすを動かせない。テレビの電源は抜いてあって、ナースコールにも届かない。一人であの部屋に取り残されているのかと思うと堪らない」。

[経営課題] 弁護士直伝! 介護トラブル解決塾Vol.27おかげさまです、外岡です!

介護・福祉系法律事務所「おかげさま」代表 外岡潤  こんにちは、外岡です。前回は施設内虐待から職員が利用者に暴行されるケースの話でしたが、こうしたトラブルが増えると「いっそのこと監視カメラを各室に設置すればいいのでは?」と思われる施設も出てくることでしょう。実際に導入した施設も多い様です。今回はカメラにまつわる問題にズームインします。

[経営課題] シリーズ・発掘 介護チャレンジャーを探せ!!vol.27

身寄りのない人の最期を看取る 開設当初から看取りを行ってきた―――――
 特別養護老人ホーム「琴清苑」(社会福祉法人双葉会・東京都西多摩郡奥多摩町)は東京多摩地区の北西部に位置し、JR青梅線の終点駅がある。人口は現在5483 人(世帯数2742・2015年4月1日現在)で、ピーク時は1970年頃で1 万人以上の人が住んでいたという。
 琴清苑の開設は昭和52年7月。85床の規模であるが、当時として一般的な多床室のみの施設だ。個室はなく、2 人部屋も3 部屋程度で他の2 室は4人部屋である。
 ここでは、開設当初から看取りを行ってきている。

[経営課題] シリーズ・小島美里と日本の介護を考える

訪問介護は在宅支援の要である 訪問介護はいらない?!―――――
 週1回の生活援助の利用から始まり、10年後には訪問診療や訪問看護と1 日数回の訪問介護を組み合わせて99歳の天寿を全うした一人暮らしの利用者さんがいた。加齢による衰えと歩調を合わせるように、ほんの少しずつ訪問回数が増えていった。「Tさん、オレが死ぬまでヘルパーやっててくれよ」。ベテランのヘルパーは、約束通り最後まで担当した。
 介護保険17年目の今、「ヘルパーさん」はなじみの深い職業になっている。「看取りを頼みたい人」をたずねるアンケートでは常に高位に入るのがヘルパーだ。
 そのヘルパーが長期間にわたって・・・・・

[経営課題] シリーズ・施設探訪 ゆいま~る高島平(東京都板橋区)

住み慣れた地域に暮らし続けられる「分散型サ高住」という新しい試み 株式会社コミュニティネットが運営する「ゆいま~る高島平」は、団地の空き住戸を活用した全国初の分散型サービス付き高齢者向け住宅。住棟全体ではなく住戸単位で改修することで、建築コストを安く抑えられるなど、分散型ならではの利点がある。2014年12月の開設から1年あまりが経過し、その現状について聞いた。

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   連載第4回 寺門先生と共に行く 中国福祉視察に同行して~高齢者の介護・医療・障がい者対策~

税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2016年5月15日

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