シニア・コミュニティ 2017年7・8月号・108号

【特集】変わる時代。介護事業の新しい可能性を探る

〚巻頭 TOPインタビュー〛 株式会社エムダブルエス日高 代表取締役 北嶋史誉 氏
 ■ 介護の常識を覆し集まる仕組みが人を呼ぶ

まさに圧倒的なスケールであった。これまでのデイサービスの概念を完全に超えている。取材の目的も大型デイサービスを“見る”ことであった。しかし、まもなくそれが的外れであることに気付かされることになる。大型化によるメリットは確かに大きい。それよりも注目すべきは利用者や職員が自ずと“集まる”仕組みであり、ビッグデータに基づいたリハビリであった。次々と介護業界の常識を覆し、全国に向けて新しい風を送る北嶋史誉氏を群馬県高崎市の大型デイサービス・日高デイトレセンターに訪ねた。

〚特集・インタビュー〛 株式会社 ビーブリッド 代表取締役 竹下康平 氏
 ■ 「制度」から離れたところから介護業界ICT化の進化が始まる

 ◎介護報酬請求までの仕組みとなっているICT  介護業界のICT と言うのは、基本的に介護保険制度に基づいた介護報酬請求までの一貫した”仕組み“でしかありません。逆説的に言えば、介護保険制度がなければ誰もICT なんて必要としない。確かに業務が楽になるとか、請求が簡単に出来るという意味では役に立ってはいるでしょうが、介護業界におけるICT は、他産業のように「生産性向上」や「業務改善」といった目的としたものではないのです。
 介護はサービスを行うこと自体に「役務者」と「受益者」の関係・・・

〚特集・特別寄稿〛 日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 竹内英二
 ■ 訪問・通所介護にみるICT 活用の現状

 ◎なぜICT が必要なのか  少子高齢化に伴い、介護サービスの市場は拡大を続けている。だが、訪問・通所介護を行う事業者の経営環境は、むしろ厳しさを増している。
 第1に、要介護者が増加する速度を上回って新規参入が続いた結果、1事業所当たりの利用者数は訪問・通所介護ともに減少傾向にある。当研究所が2015 年10 月に実施した「訪問・通所介護事業に関するアンケート」でも、事業者の8割が訪問・通所介護サービスの供給は、もう十分にあるとしていた。
 第2に、・・・

[介護福祉道場あかい花発 masaの声] 菊地 雅洋 北海道介護福祉道場 あかい花 代表
 ◎ 誇りを持つことの意味

 ◎誇りは生きる喜び  「人はパンのみにて生きるにあらず」。人は物質的な満足だけを目的として生きるのではなく、精神的な拠りどころが必要という意味である。その拠りどころとなるのが、自らの生き方に対する「誇り」ではないだろうか。
 人は永遠の存在ではない。いつかその命が尽きる時がくる。そうした儚い命を持って、人がこの世に生まれくる意味は何なのだろう。その意味を問い続け、考え続けるのが人生という旅なのかも知れない。
 生き方に「誇り」を感じることが出来れば、・・・

[小島美里と日本の介護を考える] 小島美里 認定NPO法人暮らしネット・えん 代表理事
 ◎ 「軽度者」は見捨てられた!?

 ◎影響が大きい地域支援総合事業  我が新座市でも、この4月から2015 年度介護保険制度改定の目玉のひとつ、地域支援総合事業による訪問・通所サービスがスタートした。今次改定は五月雨式に行われ、バラバラと始まるのだが、地域支援総合事業(総合事業)は自治体の選択で3ヵ年の猶予があり、最終年度が今年にあたる。多くの自治体は準備が間に合わず、今年度スタートを選択したが、どこの自治体でも市民対象には、「制度は変わったが、今まで通り。利用者に影響はない」と説明している。そんなこと、あるわけない。
 さて、新座市では、・・・

[介護の扉] 藤ヶ谷明子 ジャーナリスト
 ◎ 認知症患者の誤嚥性肺炎を恐れない感覚マヒの結末

 ◎ターミナルになって初めて知るスポンジでの口腔ケア  正雄さん(仮名・89歳)が入院した。入所していた特養で誤嚥性肺炎を発症したためだ。誤嚥性肺炎を起こしたのは、今回が4回目で、その都度、入退院を繰り返している。半年前には車いすから落下して骨折もしている。
 アツルハイマー型認知症と診断され、ここ3か月は咀嚼の力が衰えて、噎せることが多くなっていた。最初の誤嚥性肺炎から変わらず「刻み食」が提供されていた正雄さんだったが、娘の申し出により、ペースト状になる。体重の減少を案じた娘は週に2 回、お昼ご飯の介助に通うようにした。
 「見た目がね、・・・

[弁護士直伝!介護トラブル解決塾Vol.33おかげさまです、外岡です] 外岡潤 弁護士 おかげさま 代表 
 ◎ Q.登録ヘルパーが個人の携帯を仕事に用いてよいか

こんにちは、外岡です。混合介護に共生社会、地域包括ケアシステムとただでさえ喧しいこの業界。全く別方向から更なる混乱の元がやってきました。5月末に全面施行された「個人情報保護法」です。これを受けて公表されたのが「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」。介護現場、特に訪問サービス事業所の現場を震撼させる、驚くべきことが書いてあったのです。

[今そこにある課題を追う!] 介護福祉経営士・税理士 理事 藤尾智之 氏
 ◎ 人材を「人財」に育てることが出来るか 介護事業成長のカギはここにある

来年の医療・介護同時改定に向けて介護事業は大きな試練に直面している。試されるのは経営力だが、それを支えるのは介護職員の人材に他ならない。介護福祉経営士および税理士の立場から藤尾智之氏に介護業界の現状、人材活用の在り方を聞いた。  ◎人材の有無で分かれる勝ち組、負け組  介護事業の現状をひとことで言えば「勝ち組」と「負け組」がはっきり分かれている、ということです。その分かれ目は「人材」です。思う通りに職員の採用が出来ているところと、常に職員が不足がちで「派遣」に頼っているところでしょうか。当然、サービスにも大きな影響があると思います。職員のモチベーションにも関わってくる問題です。この差が拡がれば、負け組と言われる人たちは淘汰されざるを得ないと思います。現に・・・

[TREND REPORT 介護・福祉関連企業に見る新潮流〛
 ◎ ロボット掃除機も「介護ロボット」ですか

 ◎介護ロボット導入の在り方を、トップランナー「社会福祉法人・善光会」に見る 「介護ロボット」はすでに多くの介護現場に投入されている。少しずつではあるが介護スタッフとのコラボレーションが進んでいるに違いない。いま、介護事業者はどのように「介護ロボット」に向き合い、導入を図ろうとしているのか。また、課題は何処にあるのか。トップランナーとして「介護ロボット」と介護現場の融合を目指す社会福祉法人・善光会(以下、善光会)介護ロボット・人工知能研究室に徳山創室長を訪ね、その戦略の一端に触れた。
キーワードを入り口に「介護ロボット」導入の在り方を、共に考えたい。

[われらがHOPEを探せ!] 社会福祉法人 三育福祉会 大津地域包括支援センター
 ◎ 地域に飛び込む「シャロームさん」

 三浦半島の強い日差しが、本格的な夏の近いことを教えてくれる。灯台で知られる観音崎近くの特別養護老人ホーム「シャローム横須賀」を目指す。案内された集会室から真っ青な海を挟んで、遠く横浜のランドマークを望むことが出来た。その先にはうっすらと富士山のシルエット。まさに絶景、である。
 上田健理事長はシャローム横須賀の「HOPE」として、即座に地域包括チームを指名してくれた。正確には「大津地域包括支援センター」と呼ばれ、横須賀市内12の地域包括支援センターのひとつである。この地区に住む65歳以上の高齢者は、全国平均の約2倍に当たる1万2千人。カバーする面積も広い。ここを10名のスタッフが“駆け回る”。シャロームは以前から地域に積極的に出て、住民や社会福祉協議会、民生委員などと関係を深めてきた。

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税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2017年7月15日

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