シニア・コミュニティ 2017年11・12月号・110号

【特集】地域から発信する、地域包括ケア

〚特集・インタビュー〛 一般財団法人社会福祉研究所 研究員 秋山由美子 氏
 ■ 小さな点から、大きな円へ「顔が見える関係」に始まる地域包括ケア

 ◎東京・世田谷区砧地域の『ご近所フォーラム』に見る地域包括ケアのカタチ それは、ひとりのケアマネジャーと医師の“意気投合”から始まった。そこに薬剤師が加わり、地域包括支援センターがしっかりと支えて、小さな「点」が大きな広がりになった。地域包括ケアを難しく考えすぎていないだろうか。だから、住民にその存在が見えてこない。国が意図することが届かない。行政の中心で福祉に取り組み、いわば地域包括ケアの推進役を果たした秋山由美子氏はひと言で地域包括ケアを定義する。「顔の見える関係」を作り、育てること。世田谷区砧地域の『ご近所フォーラム』に地域包括ケアのカタチが見えて来る。

〚特集・インタビュー〛  社会福祉法人とちぎYMCA福祉会 理事 山田公平 氏 常務理事 塩澤達俊 氏
 ■ 人が人を巻込んで新しい住民自治の風が吹く

 ◎栃木県宇都宮市清原地区に見る地域包括ケアのうねり 100 の地域があれば、100 通りの地域包括ケアシステムがある。それぞれの地域特性を踏まえて、どの様に地域に溶け込み、どの様な試みが成されているのか。栃木県宇都宮市清原地区に社会福祉法人「とちぎYMCA福祉会」を訪ね、理事の山田公平氏及び常務理事の塩澤達俊氏に地域の新しい「うねり」を聞いた。

〚緊急リポート 派遣職員問題を探る!〛 特別養護老人ホーム駒場苑 施設長 中村浩士 氏
 ■ 派遣職員が介護現場にもたらすものは

 ◎―派遣職員の問題と課題を、人材不足の視点から見る―  ここに、派遣職員を敢然と切った特別養護老人ホームがある。東京目黒区の駒場苑である。しっかりとした理念を掲げ、「7つのゼロへの挑戦」で知られる歴史ある施設と言えども、人材不足の波は容赦なく押し寄せた。派遣職員に頼ることも稀ではなくなった。当然、様々な分野にしわ寄せがくる。今年、法人と共に進める「改革の年」を期して、経営改革を行っている。その一環として“派遣ゼロ”のスタートを切った。人件費は劇的に改善する。
 派遣問題は日本の福祉・介護の課題を映す「鏡」とも言える。しかし、人材不足の陰に隠れて、なかなか実像は外に見えにくい。実態はどうなのか。
 社会福祉法人愛隣会・特別養護老人ホーム駒場苑施設長の中村浩士氏に、派遣問題のポイントを聞いた。

〚介護業界の新潮流〛
 ■法人と労働組合が一体となって介護業界のワークルールをつくり課題の解決に取り組む

 ◎―日本介護クラフトユニオン(NCCU)と「介護業界の労使環境向上を進める労使の会」が目指すもの―  日本介護クラフトユニオン(以下、NCCU)は、まさに介護保険制度が始まる2000 年に結成された。措置から契約の時代へ、日本の福祉・介護が迎えた大きな転換期である。「介護」は大きな期待を持って迎えられた。多くの人がヘルパーの資格を取得し、介護の仕事を目指した。介護事業所も急激に増えていく。
 それにしたがって介護事業所で働く人たちを守る「ルールづくり」が課題となった。介護職員が長く、安心して働くための労働環境を早期に整えなければならない。NCCU は結成以来「業界のワークルールづくり」を最重要課題として位置づけてきた。ルール作りは介護従事者の労働条件の維持と向上、社会的地位の向上につながるが、介護事業そのものの健全な発展にも欠かせない。

〚日本介護クラフトユニオン「就業意識実態調査」から〛
 ■介護従事者・管理者のモチベーションを上げない限り先が見えない日本の介護事業

 ◎「働くうえで73.9%が不安を持っている」  実に70%を超える組合員が、働く上で「不安」を持っていることが分った。不透明な時代である。先が見えにくい。多くの人が将来に向けて“生きにくさ”を感じているが、この73.9%という結果をどう見ればいいのだろうか。多いと見るか、思ったより少ないと見るか。果たして「不安」を持ちながら、人の命を預かる仕事が出来るのだろうか。しかし、これは決して働く側に責任があるわけではない。ビジョンなき高齢化対策の“つけ”を、介護従事者が払わされていると言えるのではないか。ある意味、重い数字である。

[介護福祉道場あかい花発 masaの声] 菊地雅洋 北海道介護福祉道場 あかい花 代表
 ◎ 今後の介護保険事業経営と介護報酬改定の方向性を検証する

 ◎幻想的なシミュレーション  全国の特養では25%のベッドに空きがある。そんな状況下でも新たな特養の建設は続いている。特養を新設する社会福祉法人はきちんとマーケティングを行い、経営シミュレーションを行っているのだろうか。一部の法人の状況を見渡すと、幻想的なシミュレーションで借入金の償還計画を立てている実態も見受けられる。既存施設の空きベッドがスムースに埋まらないのに、生活圏域が異なるとは言え、同じ地域内に新設する施設のベッドがすぐ埋まると考えるのは、どういう根拠に基づいているのだろう。既存施設のショートステイの稼働率より、はるかに高い稼働率で収入を見込んでも、それは現実的なシミュレーションと言えるだろうか?

[小島美里と日本の介護を考える] 小島美里 認定NPO法人暮らしネット・えん 代表理事
 ◎ 認知症の人々を地域で支えるために

 この頃、認知症の「コミュニティケアマネジメント」についてケアマネジャーなどに話す機会が多くなっている。国が掲げる地域包括ケアシステムは横においても、コミュニティケア、つまりご近所と共に認知症の方を支えることは大切にしたい。コミュニティが認知症に優しければ、地域の住民みんなが生きやすくなる。だから、どうやって支えていけばよいかを具体的に考えてみよう、というのが私のコンセプト。地域と言うより「ご近所」と言ったほうがよいと思うのだが、まず「ご近所は厄介だ!」という切り口から始めることにしている。

[介護の扉] 藤ヶ谷明子 ジャーナリスト
 ◎ 庇い合いと打算が生み出すアタリマエの「虐待」

 ◎目の前を使用済おむつが通り過ぎる日常  スマホの機種変更をした。端末が自動的に写真をバックアップする。完了の文字が出て画面をタップすると突然、廊下に並ばされた母の姿が映し出され、息をのんだ。これは他界する直前に利用した老健のショートステイ。階上のデイルームに移動するのが難しいため、離床時間は廊下で過ごすのがこの施設のやり方だった。部屋の壁を背にズラリと並ぶ車いす。そのあいだをスタッフが巡回よろしく行き来する。所作と言葉の粗さが気になるが、任せるしかない。ほとんどの人が目の前に座る“仲間”を見るともなしに見て時間を過ごす。

[弁護士直伝!介護トラブル解決塾Vol.35おかげさまです、外岡です] 外岡潤 弁護士 おかげさま 代表 
 ◎ Q.中小事業所は、個人情報保護のために何をどこまですれば良いか

こんにちは、外岡です。今回は何かと話題の「外国人技能実習制度」を取り上げます。厚生労働省は9月29 日、同制度における介護独自のルールをまとめた告示とその解釈通知などを公表し、世間の注目を集めました。
この制度のそもそもの趣旨や、筆者が実際に見聞きした海外事情をご紹介します。

[山谷クロニカル(2) ~元女将さんの話~] 甘利てる代 介護福祉ジャーナリスト
 ◎ 「そりゃあ、昔、山谷はにぎやかだったわ」

 東京都台東区にある訪問看護ステーション「コスモス」(NPO法人訪問看護ステーションコスモス・山下眞実子代表)は、デイサービス「コスモス」も運営している。利用する人たちは山谷という土地柄もあって、ドヤに住む一人暮らしの男性や無料低額宿泊所から通ってきている人もいるが、昔からこの地に住む地元の人も少なくない。山谷はドヤばかりだと思われがちであるが、一般住宅も案外多いのだ。「コスモス」があるいろは通りの周辺にもいく筋の細い路地があって、下町の風情を残した家々が立ち並んでいる。

[われらがHOPEを探せ!] 株式会社ひまわりサービス「デイサービスひまわりⅡ浮間」
 ◎ オールマイティを楽しみながら、明日へ

介護の現場にスポットを当て、職員の頑張りを伝える、シリーズ「われらがHOPEを探せ!」。第5 弾は東京北区浮間の「デイサービスひまわりⅡ浮間」に所長であり生活相談員の久保田江利子さんを“直撃”する。マネジメントは堅実に、厳しく、こなす仕事はオールマイティ。この地に根ざして、しっかりと地域の「福祉」を支える。HOPEを見つけた。

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税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2017年11月15日

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