シニア・コミュニティ 2018年1・2月号・111号

【特集】介護報酬改定前夜。介護現場の視点で見る報酬改定

〚特集〛 菊地雅洋 北海道介護福祉道場 あかい花 代表
 ■ 介護報酬改定の方向性

 ◎経営手腕が問われる厳しい改定  来年4月からの介護報酬はプラス改定の方向性が示されている。しかし、それは人手不足による人件費増などで介護保険サービス事業所の経営が悪化していることに対応するためであるとされ、保険料負担の増加を抑えるために引き上げ幅は小幅とし、サービス内容ごとの重点化・効率化を徹底する方針である。
 つまり、引き上げは介護職員処遇改善加算が中心になり、アウトカム評価としての加算が新設されるのだから、基本サービス費は「適正化」の名目で削減される可能性が高い。よって・・・・・

〚特集〛 佐々木炎 NPO法人「ホッとスペース中原」 代表
 ■ 介護の専門性と、その評価を介護報酬に反映させたい

 ◎報酬に反映されるべきは介護の“質”であり専門性  この時期は介護保険の報酬単価が気になる。報酬単価には「政府が“介護”というものをどう評価しているか」が示されるからだ。昨今の改正は介護サービスにかかる費用を抑制する傾向にあるようだ。要介護状態にならないための介護予防や、医療との連携強化による「医学モデル」の“介護”が、より高く評価される印象を受ける。確かに誰にとっても、老いてなお健康を維持し、生活上の不便を少しでも解消する「生活支障軽減」の介護は望ましい。しかしそれは介護の目的ではなく手段である。

〚特集〛 「未来の介護」をスローガンに介護の“可能性”を広げる特別養護老人ホーム

 ◎特養の厳しい現状に危機感  まさに介護報酬改定前夜ではあるが、すでに改定の大枠が固まっている。介護報酬に関しては0.5%台の引き上げが予定されているが、介護事業所の“危機感”はこれで解消されるのであろうか。ことに、前回の改定で大幅な減算となった特別養護老人ホーム(特養)の危機感は大きかったと言える。全国老人福祉施設協議会(老施協)の瀬戸雅嗣理事は介護報酬が予算削減のターゲットにされていることは認めつつも、こと特養に関しては「これ以上の減算はあり得ない」と言う。その危機感の表れが、赤字の施設が33.8%という“衝撃的”とも言える現状を背景に開催された「決起セミナー」であろう。

〚特集〛 石本淳也 氏 公益社団法人日本介護福祉士会 会長
 ■介護保険改定は「新陳代謝」と捉えリマインドの先に新しい介護・福祉を見る

 ◎現場での関心が薄い報酬改定  報酬改定について、ケアマネジャーやソーシャルワーカー、相談業務をしている人たちはそれなりに関心を持っていると思いますが、介護現場の職員がどこまで意識をしているかといえば、まだまだ「自分のこと」として捉えられていないのではないかと思います。むしろ「諦め」に近いものがあるかもしれません。「何も変わらない」という。報酬改定があっても、待遇が“劇的”に変わらないことが分っているからだと思います。漠然と「給料がもらえれば、それでいい」と思っている人も少なくないのでは。
 確かに報酬改定に関して言えば、これまで「グッドニュース」はありませんでしたから。むしろ、バッドニュースばかり。総じて、それが「モチベーションが上がらない」「気分が高まらない」といったことに繋がっている。

〚特集〛 活かされるか、現場の声 望まれる、地に足の着いた議論
 ■どう評価する営業努力

 今回の報酬改定でも「デイサービス」に対する対応が話題になっている。大規模型デイサービスの報酬引き下げである。前回改定では小規模型デイサービス等が“やり玉”に挙げられた。その記憶も新しい中での「大規模デイ叩き」である。理由ははっきりしている。前回の小規模型同様、「儲けすぎ」であろう。
 スケールメリットが生かせる大規模型は通常規模型に比べて介護報酬は約2 ~ 4%低く設定されているが、今年度の「介護事業経営実態調査」で利用者一人当たりのコストは約11 ~ 12%低く、収支差率も通常規模型の3.4%に対して大規模型(Ⅰ)で7.9%、同じく(Ⅱ)で10.0%という、高い数字が示された。「モグラたたき」ではないが、頭を出すと叩かれる。

〚特集〛 小島美里 認定NPO法人暮らしネット・えん 代表理事
 ◎ 少しばかりのプラス報酬改定で何ができるのか

 この号がお手元に届く1月半ばには次期介護報酬改定の答申が出される。さすがに若干のプラス改定になると報じられているが、喜べる状況にはない。介護業界の疲弊は少しばかりのことで解消せず、このままでは2025年以前に「介護保険あってサービスなし」の事態が出現する。新設の特別養護老人ホームは職員が確保で出来ないために開設できず、訪問介護のヘルパーは平均年齢が60歳に近づこうとしている。介護は対人援助の仕事で当然向き不向きがあるが、選んでいられる状況にないので、目をつぶってでも採用せざるをえない。その結果なのか、目を覆いたくなるような介護施設での虐待や殺人事件。そして不十分な介護サービスが招く大量の介護離職。それでも、本気の対策は何も出てこない。

〚インタビュー〛 和氣美枝 氏 一般社団法人介護離職防止対策促進機構 代表理事
 ◎ 生き方の多様性を認める社会へ自らの人生を最優先した先に、介護がある

 ◎介護者への支援と企業の啓発  私は誰も後先考えない「介護離職」はしてほしくないと思っています。そのために個人に向けてはサイトの運営や介護者の会の運営、企業や自治体のセミナーなどを通して情報提供を行い、企業には社員を介護離職に追い込まないための啓発と支援方法の提供をしています。介護の為に社員が辞めることで、職場のモチベーションが落ちることも避けたいし、人材不足に陥って企業の生産性を落とすことも避けたい。介護者の支援と、企業への啓発を通して、介護離職ゼロを目指しています。
 介護離職は企業にとっても大きな損失です。思いとどまらせたい。そのためには人事部と管理職の方は当事者と一緒に考えてほしい。これまで100の仕事が出来ていたけれど、介護が理由で50 の仕事しか出来なければ、「50でいいから。あとは何とかする」と言ってほしいのです。

[寄稿] 峰 毅  東京世田谷ワイズメンズクラブ
 ◎ 地域高齢者自主サロンに於ける地域支援活動の展開
    ~地域包括ケアシステムの実践モデルから見えてくるもの~

 ◎Ⅰ.はじめに  我が国の65歳以上の高齢者人口は、3,514万人(2017年9月現在)で、総人口に占める割合は27.7% となり、前年と比較すると57万人、0.5ポイントと増加し過去最高に達した。
 高齢化率が上がるなか孤立は、深刻な社会問題として検討され、その方策として社会的交流の場の整備が挙げられ、共生社会の実現に向け、高齢者をどう支えていくか様々なモデルが提示されている。
 支えたり支えられたりと、立場が明確に分けられないのが地域であり、主体についても行政や専門職だけが、担い手になるとは限らず、高齢者であっても支え手となり得る。
 今回のモデルは地域に於いて高齢者の孤立化が進むなか、高齢者自身が課題を共有し、高齢者同士の交流促進を図る為、住民間の繋がりを基に、「YMCAすずらん会」という居場所としてのサロンを、自立性を持ち主体的に創出したものである。

[介護の扉] 藤ヶ谷明子 ジャーナリスト
 ◎ 自立支援を妨げる「はじめの一歩」の踏み違え

 ◎何かと話題の「ジリツシエン」  介護業界の流行語大賞は「自立支援」で決定。ノミネートの常連は地域包括ケア、多職種連携、報酬改定といったところか。業界の端っこで細々と仕事を続けて四半世紀、ここ数年の取材テーマはほとんどが自立支援絡みである。お題を頂戴し、自立支援なる言葉を掘り下げると「対人援助における対象者の自立に向けた支援」のことを言うらしい。
 では、自立とは何か。調べてみると自立には精神的・身体的・社会的の3種類があるそうで、高齢者にはなかなかのハードルだ。

[弁護士直伝!介護トラブル解決塾Vol.36おかげさまです、外岡です] 外岡潤 弁護士 おかげさま 代表 
 ◎ Q.「一億総活躍」と簡単に言うけれど…

こんにちは、外岡です。今回は、今から準備しておきたい「定年後の雇用」の問題について解説します(技能実習の続きについては次号で取り上げます)。皆さんは「第二定年」という言葉を耳にしたことがありますか? これは65 歳定年の後に、更に70歳、75歳を定年として設定するものです。
「生涯現役」、実現できれば素晴らしいことですが、雇用する側から見ると何かと気苦労が絶えません。
一体何が問題なのでしょうか。

[山谷クロニカル(2)] 甘利てる代 介護福祉ジャーナリスト
 ◎ 山谷の朝市

 ◎「朝市」に集まる人、もの  その日、午前5時すぎに山谷にいた。ドヤの朝は早い。朝市が立つという玉姫公園に向かう。いつもは周辺に大勢のおじさんたちが寝泊りしている。コスモスから5分。吉野通りに突き当たると、おじさんたちの姿をちらほらと見るようになる。さすがにこの時間、吉野通りを行き来する車はまだ少ない。ここを突っ切って玉姫公園に向かう。おじさんたちの姿が一気に増えたようだ。みな同じ方向に向かって進んでいる。この流れについて行ってみよう。

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[海外情報・福祉情報] アメリカの最新事情と団塊世代の介護施設を訪ねて [コラム]《老人たちの居場所》 自動車に跳ねられるってどんな感じ? [コラム]《小池真理子の訪問看護日記》 優しさぐるぐる
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体裁 A4変形判56ページ
発行日 2018年1月15日

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