シニア・コミュニティ 2018年11・12月号・116号

【特集】終末期医療とグリーフサポート

〚特集・インタビュー〛 医療法人社団パリアン理事長 クリニック川越 院長 川越 厚 氏
 ■ 誰もが納得できる死とは―――「看取る家族」を育てる在宅緩和ケア

私たちは「死ぬこと」に目をそむけながら生きている。しかし、やがては誰もがその時を迎えなければならない。今や病院に全てを委ねる時代は終わったとも言われる。死へのプロセスは自らの意思で決めなければならない。そのためには「死の教育」が必要と説く川越厚氏に在宅緩和ケアの在り方を聞いた。納得できる死とは何か。

〚特集・インタビュー〛 特定非営利活動法人緩和ケアサポートグループ 代表 河 正子 氏
 ■ 緩和ケアが医療と福祉を繋いで地域にケアコミュニティを育てる

イギリスが発祥と言われるホスピスだが、日本での歴史は淀川キリスト教病院での取り組み(1973年)や、聖隷三方原病院に開設された院内独立型ホスピス(1981年)に始まる。まだ50年に満たないが、ホスピスを始めとした「緩和ケア」に大きな変革が起きようとしている。地域における医療と福祉が連携した新しいコミュニティの芽生えである。
長く緩和ケアの現場に立ち、研究に携わりながら「ケアコミュニティ」に夢を託す河正子氏に、緩和ケアの“心”を聞いた。

〚特集〛 「グリーフサポートせたがや」に見るファシリテーターのこころ
 ■ ファシリテーターがその人のグリーフをそのまま受け止めて寄り添う―――

終末期医療はそのままグリーフサポートに繋がっていく。しかし、これまで身近な人を亡くした人の気持ちに、社会が寄りそうことは少なかったのではないか。「グリーフサポートせたがや」はファシリテーターと呼ばれるボランティアが自ら立ち上げ、さまざまなグリーフに寄りそう。そして、痛みと時間を共有し、お互いにサポートし合う。だから、ケアではない。グリーフサポートがふさわしい。共感したい。

〚特集〛 大胆な変革を遂げるドイツの介護保険
 ■ ボランティアが支える在宅ホスピスに新しい終末期ケアのカタチを見る

 ◎教育されたボランティアががん患者を支える  ベルリンに「AWWホスピス・ベルリン」という組織がある。特別な訓練を経たボランティアが、在宅の末期がん患者を訪問して緩和ケアサービスを行う。創業者のアリスティード・プロクシュ氏は心理学者でもある。Webサイトを立ち上げ、新聞広告も利用しながらボランティアの数を増やし、この約7年間で35人のがん末期患者の終末期ケアを行った。ケアの期間は平均2~6か月程度だが、2年間に渡ることもある。
 看取りのボランティアスタッフは約60名だと言う。ベルリン市内には、このようなボランティア団体が他にも5団体(11ヶ所の事務所)あり、それぞれがスタッフを教育しながら運営をしている。ボランティアの教育時間はグループワークを中心に120時間もあり、その内20時間は実習である。更に1か月に1回、スーパービジョンも行われる。死んでいく人に向き合う能力を維持し、かつその人のニーズにそった対応するためである。

[介護福祉道場あかい花発 masaの声] 菊地雅洋 北海道介護福祉道場 あかい花 代表
 ■ 3年後には国民と介護事業者により多くの痛みが伴う改革が待っている

 ◎厳しい経営が予想される老健  今年度の介護・診療報酬ダブル改定に先駆けて、「地域包括ケアシステム強化法」が2017年に制定された。そこでは保険者に地域の高齢者の自立支援・重度化防止施策と目標設定を義務付け、評価後にインセンティブ交付金を支給することなどが規定された。これによって、市町村による介護事業者への過度な締め付けや、ローカルルールの乱立を懸念する声も聞こえてくる。

[小島美里と日本の介護を考える] 小島美里 認定NPO法人暮らしネット・えん 代表理事
 ■ いま、介護事業所に求められる災害対策

 この夏はたてつづけに大きな自然災害に見舞われ、自然災害多発国であることをあらためて思い知らされた。  相次ぐ自然災害は、現代社会のもろさも突きつけた。北海道の震源に近い地域に住む知人のメールには、「地震そのものの被害は少なかったが、その後の停電が長かった。冬季の停電対策を考えなければ」とあった。北海道はこの時期、台風に続く地震、またまた洪水の危険と気の休まる間もなかったそうだ。秋の初めだったから良かったが、冬なら凍死者も出たに違いない。薪と炭の時代じゃないから電気は命綱だ。

[介護の扉] 藤ヶ谷明子 ジャーナリスト
 ■ 外国人介護士が増え続ける中で・・・。

 ■国際交流・国際貢献の名の下、他国に人材を求める  人口減少の流れの中で、多くの業種がマンパワー不足の問題を抱えている。特に介護職では‘25年に39万、35年では79万人と膨大な担い手が足りなくなるという予測もある。団塊世代の介護が一段落する‘40 年までをどう乗り切ればいいのだろう。
 日本介護クラフトユニオンのアンケートによると、14%が「業界を辞めたい」と回答しているという。‘16年度の介護労働実態調査では、介護職の離職率が16.7%に上っていることが明らかになっている。

[弁護士直伝!介護トラブル解決塾Vol.41おかげさまです、外岡です] 外岡潤 弁護士 おかげさま 代表 
 ■ Q.身体拘束に同意は必須?

 猛暑の日々が過ぎ去ったと安心したのもつかの間、台風が何度も日本列島を直撃し、施設事業所の皆様も対応にご苦労されたことと存じます。今回は身体拘束について個別事例を元に詳しく検討します。

[山谷クロニカル(8)] 甘利てる代 介護福祉ジャーナリスト
 ■ 「いろは通り」に雨が降る

 ◎訪問看護師のランチタイム  秋の一日。台風の影響だろうか、時折ゲリラ豪雨のように降ったり、止んだり。落ちつかない空模様だ。それにやけに蒸し暑い。「訪問看護ステーションコスモス」(東京都台東区・NPO法人訪問看護ステーションコスモス)が路上で暮らす人を対象にした無料のデイサービス「憩いの間」(以下、いこいと略)は、昼12時にオープンだ。
 小雨が降る中、12時前にはすでに7? 8人が並んでいる。以前(といっても、今年の夏前までは)、いこいがある「いろは通り」は半円を描くように屋根が取り付けられていたが、屋根がなくなってからは雨風をしのげなくなっている。

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税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2018年11月15日

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