シニア・コミュニティ 2019年7・8月号・120号

【特集】大規模化に向けて加速するか、介護施設の連携・統合  ◆ 介護の質と経営の在り方◆鏡諭
 ◆ 「西多摩特養ガイド」に見る施設連携の在り方◆前田卓弥
 ◆ 地域の福祉ニーズに応えるか、連携と大規模化

【認知症ケア】  ◆ 医師は治療だけではない◆中根一
 ◆ 認知症施策推進大綱
 ◆ 一冊の絵本が訴えかけるもの◆長嶺超輝

【Interview】  ◆ 認知症フレンドリー社会をめざして◆徳田雄人

【伝える】  ◆ 人を動かすひとになれ。◆辻川泰史

【Opinion】  ◆ 介護福祉道場あかい花発masaの声◆菊地雅洋
 ◆ 小島美里と日本の介護を考える◆小島美里
 ◆ 介護の扉◆藤ヶ谷明子
 ◆ 介護トラブル解決塾◆外岡潤

【Column】
【Etc.】



「シニア・コミュニティ 2019年7・8月号」表紙


【特集】大規模化に向けて加速するか、介護施設の連携・統合

利用者目線の先にある連携と統合介護業界は合従連衡の歴史とも言えるのではないだろうか。彗星のごとく現れたカリスマ事業者が、拡大路線の果てに介護業界から去って行った例は枚挙にいとまがない。ワタミの介護しかり、メッセージしかり。それらを飲み込んで規模を拡大し続けているのが大手介護事業者だ。

しかし、業界最大手のニチイ学館でも介護事業の売り上げは約1500億円に過ぎない。メーカーで言えば中小企業のレベルであろう。介護施設を運営する上場会社10社の事業関連売上高の合計約6500億円は、介護市場規模の1割にも達しないという。ならば、さらに規模拡大に向けてM&Aが活発化するのだろうか。規模拡大のメリットはあるのだろうか。

ますます人手不足が深刻化するであろう介護業界は、究極の〝人手集約型産業"とも言えるわけで、しかも人材の「質」が厳しく問われる業界でもある。量と質。この相反する課題が大規模化によって「うまくいく」とはとても思えない。相次ぐ介護現場での事件や事故が、その困難さを証明していないだろうか。

しかし、このままでは済まないことも明白であろう。介護事業所が地域を支える"資源"としてあり続けるためには、法人や施設同士の連携、統合は避けて通れないとも言えるが、単なる「経済」に視点を置いた"安易"なそれは利用者の信頼を失い、結局は「自分の首を締める」ことにもなりかねない。

厚生労働省は社会福祉法人の連携を促すことを目的に、「連携法人制度」の導入に向けて検討を始めるという。いわゆる「持ち株型」である。それぞれの法人が独自性を保ちながら、経営の安定につながれば良いとは思うが、利用者目線の先にこそ連携があり、統合があることを心に留めておきたい。利用者を置き去りにした連携・統合に明日はないのではないか。

 ◆ 介護の質と経営の在り方◆鏡諭(淑徳大学コミュニティ政策学部長/教授)
 ◆ 「西多摩特養ガイド」に見る施設連携の在り方◆前田卓弥(特別養護老人ホーム麦久保園施設長補佐)
 ◆ 地域の福祉ニーズに応えるか、連携と大規模化

【認知症ケア】網の目を限りなく小さくするために

認知症施策推進大綱が発表された。認知症の発症や進行を遅らせる「予防」と認知症の人が暮らしやすい「共生」を2本柱に、2025年までの施策を取りまとめたものである。この中身についての評価は今後、それぞれの立場から成されるであろうが、とにかく向かうべき方向性は示された。果たして、これによって日本の認知症ケアは新たな道が開けていくのであろうか。

しかし、「大綱」とはあくまで"根幹"を示したものであることを忘れてはならない。あとは「国民の皆さん、頑張ってください」とまでは言うつもりもないだろうが、いずれにしろ幹を太くし、葉を付け、養分を行き渡らせるのは、私たち国民一人ひとりに委ねられていることに違いはない。

国が「わが事」と言ったのも記憶に新しい。しかし、国民はいまだに「わが事」と考えているとは思えない。地域で、仲間で認知症の人、家族を支えるために、私たちは何を考え、どうアクションを起こすべきなのか。

今回の「大綱」が大きなセーフティネットであるならば、その網の目を限りなく小さくするための"知恵"を、みんなが出しあう"場"があってもいいのではないか。

「シニア・コミュニティ」は毎号、認知症をテーマに取り上げます。
介護現場から、介護する家族から、医療・看護の現場から、そして当事者の方たちから……。多くの声に耳を傾け、認知症の人が"当たり前に"いる社会をめざせればいいな、と思っています。

 ◆ 医師は治療だけではない◆中根一(帝京大学医学部教授/帝京大学溝口病院脳神経外科)
 ◆ 認知症施策推進大綱
 ◆ 一冊の絵本が訴えかけるもの◆長嶺超輝(出版プロデューサー)

interview

認知症に対する施策は、当事者に"矢印"が向いているという。つまり、認知症の人たちをいかにサポートするか、である。しかし、そこには限界が見えている。社会環境そのものを変えなければならないのではないか。社会の仕組みそのものを認知症対応にアップデートする。どこかつかみどころのない認知症対応に、明確な方向性を示すキーワードとして『認知症フレンドリー社会』に注目したい。
 ◆ 認知症フレンドリー社会をめざして◆徳田雄人(NPO法人認知症フレンドシップクラブ理事)

伝える

利用者に学び、歴史に学び、地域に学ぶ。いま、介護業界に求められているのは「現場スタッフをマネジメントできるひと」だと言う。
リーダーシップを持って業界をリードする若い介護職が待たれる。
その一歩は、学ぶことから始まる。
 ◆ 人を動かすひとになれ。◆辻川泰史(介護事業コンサルタント)

Opinion

●繰り返される虐待にどう対処すればいいのか
   ◆ 介護福祉道場あかい花発masaの声◆菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花代表)

●介護保険制度は持続しても要介護者の生活は守れない
   ◆ 小島美里と日本の介護を考える◆小島美里(認定NPO法人暮らしネット・えん代表理事)

●“自己責任”という無責任を許すな
   ◆ 介護の扉◆藤ヶ谷明子(ジャーナリスト)

●弁護士直伝!介護トラブル解決塾 おかげさまです、外岡です! vol.45
   ◆ 介護トラブル解決塾◆外岡潤(弁護士/介護・福祉系法律事務所「おかげさま」)

Clumn

●高齢者自動車免許返納に優先順位?    ◆ 老人たちの居場所◆中山賢介(コラムニスト)

●価値観を変える    ◆ 佐々木炎(NPO法人ホッとスペース中原代表)

●アクセルとブレーキを踏み間違える前に    ◆ 中村浩士(介護老人福祉施設麦久保園法人事務局長)

Etc.

 ◆ ソーシャルワーク機能に関する調査(東京都社会福祉協議会・東京都高齢者福祉施設協議会)
 ◆ 知っておきたい福祉用具のこと
 ◆ WATC NOW
 ◆ 愛恵福祉支援財団海外研修生募集
 ◆ 書評

税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2019年7月15日

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